個人輸入物語1 ~はじめてのオパス~

「やっぱりこれ、すごく可愛い!」

onepiece-resized-600パソコンの液晶に映っているのは、ビビットな色使いの、子供用のワンピースだった。雑誌で見て一目惚れをし、ブランドを調べてホームページを開いた愛子は、三才になる自分の娘に着せた姿を想像した。絶対似合う。絶対可愛い。

 「どうしよう、欲しいなあ。えーっと、52ドル? あー、これじゃ買えないわね。日本じゃ売ってないのかな?」

画面に向かって一人言を言いながら、愛子は商品名を検索エンジンにかけて探しはじめた。しかしヒットした目ぼしいショップには、ことごとく売り切れの文字。しかも入荷未定という、愛子にとってはトドメの一言もご丁寧に添えてあった。
いつもの愛子なら、ここで諦めていた。買えないなら仕方がない、と。しかし、今日の愛子は違った。可愛い娘の可愛い姿を見たい、という気迫があった。

心意気もあらたに鼻息も荒くネットサーフィンを続けていると、興味深いブログにぶつかった。

「個人、輸入? なあに、それ」

興味を引かれるままに読み進めていくと、その記事はさっき見つけたワンピースではないけれど、同じブランドの服を「個人輸入」で手に入れた、というものだった。これは! と愛子は閃いた。

(そっか、日本で売っていないなら、自分自身で輸入すればいいのね!)

そう思い付くと、いてもたってもいられなくなったが、はやる気持ちを抑えつつ、今読んでいるブログを改めて読み直す。思い付いたはいいけれど、その方法が全く検討がつかないからだった。

(詳しいやり方は書いてないにしろ、ヒントくらいなら出てるわよね……)

カチカチとマウスをクリックしながら、目を皿にしてその単語を探す。「これかしら」と、愛子はある一文に釘付けになった。

――ここのお店の服は日本じゃなかなか買えない(涙)けど、私には強い味方がいるのデス! こないだの記事にも書きましたが、大切な事なのでもう一回書きます(笑)。それが――


オパスさんです?」

しかし、残念なことに、このブログにはこれ以上ヒントになるような事は書かれていなかった。念のためにお気に入りフォルダに追加して、愛子は新しい単語をキーボードで叩いた。

「オパス、個人輸入……っと。……えっと、これ、かしら?」

カチリ。クリックすると、鮮やかなブルーで統一されたページが開かれた。そして、気になって仕方がなかった
「個人輸入」の文字が。

否応なしに期待が高まる。

(個人輸入ってどうやればいいのか、ここに書いているのよね)

そして愛子は、オパスのホームページを読破すべく、深呼吸してからマウスを握る手に力を込めたのだった。

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オンラインショッピングと商品転送サービス

>個人輸入とそのルールについて

商品転送サービスと個人輸入代行の違い

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「ふう……」

知らぬ間についた溜め息に、ちょっと自嘲する。

一通り読んだ。そして、なんとなくだけれども個人輸入について分かった。けれどそれはやはり、なんとなく、だった。

愛子は、ネットショッピングこそ有名ネットショップを使って何度か経験したことがある(時間がないときに便利なのよね)が、もちろんそれは日本国内での話だ。その感覚とさほど変わらないのかと思いつつも、アメリカで買い物をするというだけで、つい尻込みをしてしまう。

通関、税関、関税、燃油負荷運賃。日常では使わない言葉に、脳が疲れてしまったのかもしれない。

(やっぱり止める?)

愛子は自分に問いかけた。けれども、答えはノーだった。可愛い娘のため、しいてはそれを見たい見せたい自分のため。

愛子は、今度こそ心を決めた。

次回、個人輸入物語②~はじめてのオパス~

※この物語の登場人物はフィクションです。

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